
愛犬の健康と長寿を支える1番大切な要素の一つが、毎日のわんちゃんの食事です。しかし、市場には数多くのドッグフードが溢れており、どれを選べば良いのか迷ってしまう飼い主さんは多いのではないでしょうか。
本記事では、国際的な栄養基準と科学的知見に基づいて、愛犬にとってベストなドッグフードを選ぶための包括的なガイドをご案内します。
ドッグフードの選び方の基本原則
ドッグフード選びにおいてとりわけ重要なのは、愛犬の年齢、体重、活動レベル、健康状態に適した栄養バランスの取れた食事を提供することです。
犬は人間とは異なる栄養要求を持つため、人間的な感覚だけでなく科学的に証明された基準に基づいて製造された製品を選ぶことが不可欠です。
総合栄養食の重要性(何より優先させよう)
ドッグフード選びの基本の第一歩は、総合栄養食と表示された製品を選ぶことです。何はともあれ、総合栄養食をわんちゃんの主食として優先させることが第一です。
総合栄養食を人間でいえば、和食、ラーメン、カレーのような存在。総合栄養食でないおやつの場合、人間でいえば、ポテトチップスやデザートのような存在です。
総合栄養食の定義とは、「犬が必要とするすべての栄養素を適切なバランスで含み、新鮮な水と一緒に与えるだけで健康を維持できるように調整されたフード」を指します。これらの製品は、国際的な栄養基準に基づいて開発されており、愛犬の健康維持に必要な栄養を確実に摂取できます。
手作りの餌やカリカリやおやつ等は、総合栄養食をしっかり与えた上で、サブメニューとして与えましょう。
ドッグフードの選び方:国際栄養基準・AAFCOとFEDIAFの重要性
AAFCO(米国飼料検査官協会)基準
AAFCO(米国飼料検査官協会)は、ペットフードの栄養基準設定において世界的に権威のある機関です。日本のペットフード公正取引協議会もこの栄養基準を採用しており、多くの国で参考にされています。
なお、AAFCOの「子犬」は成長期と繁殖期の両方を含みます。また、「成犬」とは維持期を意味します。
AAFCO タンパク質の基準値
AAFCOが定める犬用フードの基本的なタンパク質基準は以下の通りです:
子犬: 22.5%以上
成犬: 18.0%以上
これらの基準は、犬の生理学的要求と消化能力を考慮して設定されており、健康維持に必要な最低限の栄養素量を示しています。
AAFCO 脂質の基準値
AAFCOが定める犬用フードの基本的な脂質基準は以下の通りです:
子犬: 8.5%以上
成犬: 5.5%以上
AAFCOの犬栄養専門小委員会(CNES)は、2014年の改定において脂質の推奨量を0.5%引き上げましたので、以前の基準値はこれより0.5%低い値です。(AAFCOの推奨する基準値が脂質8.0%以上や5.0%以上と書いてある場合は古い情報です)
AAFCO 必須脂肪酸の詳細基準
AAFCOは脂質の総量だけでなく、必須脂肪酸についても具体的な基準を設定しています:
■リノール酸
子犬: 1.3%以上
成犬: 1.1%以上
■オメガ3脂肪酸(成長期・繁殖期のみ)
α-リノレン酸: 0.08%以上
EPA+DHA: 0.05%以上
FEDIAF(欧州ペットフード工業会)ガイドライン
FEDIAF(欧州ペットフード工業会)は、ヨーロッパにおける主要な栄養基準値を発表しており、2024年に最新のガイドラインを発表しました。このガイドラインは、現代の科学的研究を反映し、犬の生涯段階、健康状態、活動レベルに応じた推奨栄養レベルを詳細に規定しています。
なお、日本の数あるドッグフードのサイトの中でこのFEDIAFの基準値を解説するサイトはあまり多くないので、ドッグフードの判断材料のひとつとして大切な情報源としてご認識されることをお勧めします。
FEDIAFの2024年版では過去のデータから大幅に改定されています。
FEDIAF タンパク質の推奨される基準値
FEDIAFの2024年版ガイドラインにおける犬用フードの詳しいタンパク質基準をこれから紹介します。
タンパク質 成長期初期(生後14週未満)・繁殖期
62.5g/1000kcal(約25%)
タンパク質 成長期後期(生後14週以上)
50.0g/1000kcal(約20%)
タンパク質 成犬期(維持期)
■ 低活動レベルの犬(活動レベル95kcal/kg^0.75の犬)
52.1g/1000kcal(約21%)
例:トイプードル チワワ マルチーズ ニューファンドランド セントバーナード
■ 中活動レベルの犬(活動レベル110kcal/kg^0.75の犬)
45.0g/1000kcal(約18%)
例:ゴールデンレトリーバー ラブラドールレトリーバー ボーダーコリー(ペット) ビーグル 柴犬
このように、AAFCOと違ってタンパク質の基準値は範囲ではなく、理想的な基準値を示しています。
FEDIAF脂質の推奨される基準値
脂質 成長期初期(生後14週未満)・繁殖期
8.5%以上
脂質 成長期後期(生後14週以上)
8.5%以上
脂質 成犬期(維持期)
5.5%以上
ドッグフードの選び方:基準値は大切だが全犬種にベストとは限らない

基本的に、上記の国際的な基準値は犬全体の傾向を示していますので、その範囲のドッグフードを選ぶことは愛犬にとって無難といえます。しかし、FEDIAFのようにぴったりの数値がある場合は、それがベストとは限りません。
近年は犬のドッグフードについて世界的に研究が進んでおり、様々な論文によって「犬種別」に理想的なたんぱく質や脂質が異なることが実験結果によって示されています。
たとえば、ビーグルとマルチーズとでは同じ小型犬だけど、必要とされるベストなタンパク質や脂質、そしてエネルギー量が違うということです。
そのため、このFEDIAFの基準値がすべての犬にベストという決定的な値ではなく、犬全体としての傾向として把握しておくと良いでしょう。
さらに理想的な値を知りたい場合は、犬種別のドッグフードの論文から調査する必要があります。
ドッグフードの選び方:栄養成分の見極めポイント

ドッグフードのパッケージで確認すべきタンパク質の量と品質
タンパク質は犬の健康維持においてとくに重要な栄養素の一つです。
しかし、単純に含有量だけでなく、その質も重要な要素となります。 高品質なドッグフードでは、AAFCO最低基準を大幅に上回る25-35%のタンパク質を含有することが多いのですが、これは犬の筋肉維持と全体的な健康に有益とされています。
一方で、タンパク質が多すぎる・・・具体的に40%を超えることはあまり推奨されませんので、その辺は要チェックです。
タンパク質の理想的な範囲:18%~35%
ここから大きく外れるドッグフードの場合は、詳しく調査したほうがいいと思います。
なお、タンパク質源として、「チキンミール(〇〇ミール)」、「肉類」とかではなく、具体的に「チキン」「ビーフ」「魚類」などが明記されている製品を選ぶことが重要です。
肉の種類が具体的でないと何の動物のどの部位の肉を使っているかわかりませんからね。この辺は飼い主さんがしっかり確認しなければなりません。
脂質の適切なバランス
脂質は犬にとって重要なエネルギー源であり、必須脂肪酸の供給源でもあります。AAFCOの基準では: 子犬用: 8.5%以上 成犬用: 5.5%以上 脂質対タンパク質比(FPR)は、ドッグフードの品質を評価する一つの指標として使用されます。
一般的に、FPRは50-80%の範囲が適切とされ、90%を超える製品は避けることが推奨されています。
ドッグフードの選び方:ラベル表示の正しい読み方
原材料表示から判断するドッグフードの選び方
ドッグフードの原材料は、重量の多い順に記載されることが法律で定められています。
しかし、この表示方法には注意すべき点があります。 生肉が原材料の初めのほうに記載されている場合、その約70%は水分であり、加工過程で失われるため、実際のタンパク質含有量は見た目ほど高くない可能性があります。
一方、チキンミールなどの乾燥肉類は水分が除去されているため、より濃縮されたタンパク質源となるという意見があります。
しかし、ここには落とし穴があり、「〇〇ミール」という原材料はいったい何の肉を使っているか明確ではありませんので、この原材料は可能な限り避けたほうが良いという意見がペット業界の中で少なからずあります。また、私個人は「〇〇ミール」を避けたほうが良いと思っています。
ドッグフードの選び方:避けたほうがいい添加物をチェック
すべての添加物が有害というわけではありません。天然に近い酸化防止剤や栄養補強のためのビタミン・ミネラルは、ドッグフードの品質維持と栄養価向上に役立つ場合があります。
ただし、合成添加物の中には長期摂取により健康に影響を与える可能性があるものも存在するため、原材料表示を確認し、不明な添加物が多用されている製品は避けることが賢明です。
避けた方がいいと言われている添加物
■ 酸化防止剤(合成)
BHA、BHT、エトキシキン
■ 発色剤・保存料
亜硝酸ナトリウム、プロピレングリコール、グリシリジン・アンモニエート、没食子酸プロピル
安全性が高いと言われている添加物
■ 酸化防止剤(天然由来)
ビタミンE(トコフェロール・ミックストコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、 ローズマリー抽出物、クエン酸
■ 天然由来の着色料
パプリカ由来の色素、ターメリック
酸化防止剤がある場合、全否定するのではなく、天然由来か石油由来かを確認して判断しましょう。
日本の安全基準に適合したドッグフードの選び方
日本では「ペットフード安全法」により、ペットフードの安全性が法的に保障されています。
この法律は、製造方法、表示基準、成分規格を定め、有害物質を含む製品の製造・販売を禁止しています。また、トレーサビリティの確保により、問題が発生した場合の迅速な対応が可能となっています。
そのため、海外のドッグフードで販売数が少なかったり、あまり日本で流通していないマイナーな商品は控えたほうが無難で、そのような場合は国産のドッグフードまたは海外で有名なドッグフードを選ぶほうが良いでしょう。
ライフステージ別の選び方
一般的にネット上で人気のドッグフードはオールステージ用のドッグフードが多いので、オールステージ用のドッグフードをベースに解説します。
子犬期(成長期)の栄養要求
子犬は急速な成長と発達のため、成犬よりも高い栄養密度を必要とします。
AAFCOやFEDIAFの基準で示されている通り、子犬用のドッグフードは成犬用のドッグフードと比較して、タンパク質、脂質ともに多く必要とされる傾向にあります。
大型犬の子犬の場合、生後6ヶ月頃までは特に高い栄養要求がありますので、オールステージ用のドッグフードを選ぶことがベストとは限らない場合があります。
成犬期(維持期)の栄養管理
成犬期では、体重維持と健康状態の維持が主な目的となります。
よく見かけるオールステージ用のドッグフードは成犬期こそ相応しい選択肢かもしれません。
高齢犬の特別な配慮
高齢犬では消化能力の低下や代謝の変化により、より消化しやすく、関節や認知機能をサポートする栄養素を含むフードが推奨されます。
また、成犬と比べて脂質は控えた方が良いと言われています。そのため、オールステージ用ではなくシニア犬用のドッグフードが推奨されます。
信頼できるドッグフードメーカーの選び方

専門家監修ドッグフードの見分け方
信頼できるペットフードメーカーは、動物栄養学の博士号や獣医師等の資格を持つ専門家を起用して、監修を受けています。
ここで大事なのは「〇〇先生推薦」ではなく「開発に携わる」ということ。
たとえば海外の場合、米国獣医栄養学会(ACVN)または欧州獣医比較栄養学会(ECVCN)の認定を受けた獣医栄養学専門医の先生を雇用して開発に携わっています。
研究開発に投資するメーカーのドッグフード選択
優良なメーカーは、自社製品の栄養価値と安全性を証明するため、査読付き学術誌に掲載される研究を実施しています。このような科学的根拠に基づく製品開発は、品質の高さを示す重要な指標となります。
実践的なドッグフードの選び方:4つのステップ

この記事の復習になりますが、次のステップを踏まれることをおすすめします。
ステップ1:愛犬の基本情報に基づくドッグフードの選び方
まず、愛犬の年齢、体重、活動レベル、健康状態、アレルギーの有無を正確に把握します。これらの情報は、適切な栄養基準と製品選択の基礎となります。
ステップ2:ドッグフードの栄養成分表示を確認する
製品パッケージの栄養成分表示を確認し、愛犬のライフステージに適した「完全かつバランスの取れた」栄養を提供することが明記されているかチェックします。
栄養成分表示とは、「タンパク質」「脂質」「粗繊維」「粗灰分」「水分」の5項目が基本です。これは%の割合で示されることが多いです。
ステップ3:原材料の質から判断するドッグフードの選び方
原材料表示のトップから1~2番が、高品質なタンパク質源(肉類、魚類)であることを確認します。
これは、具体的でなければなりません。
曖昧な表記(「肉類」「副産物」「〇〇ミール」など)は避け、「チキン」「サーモン」など具体的な表記のある製品を選びます。
ステップ4:給与量調整を含めたドッグフード選択
製品の給与指示は目安であり、愛犬の体重変化、活動レベル、体調を観察しながら適切に調整することが重要です。
定期的な体重測定と体型評価により、ベストな給与量を見つけることができます。
愛犬の100%望むままに与えることは避け、きちんと供給量を定めましょう。
ドッグフードの選び方:まとめ
愛犬に1番相応しいドッグフードを選ぶことは単なる食事の提供を超えて、愛犬の生涯にわたる健康と幸福に影響を与える重要な決断です。
本記事で解説した国際的な栄養基準と科学的知見を活用することで、市場に溢れる数多くの選択肢の中から、真に価値のある製品を見極めることができます。
AAFCOやFEDIAFといった権威ある機関の基準は、世界中の研究者と専門家による長年の研究成果の結晶であり、これらの指針に従うことで愛犬の栄養要求を基本的に満たせる可能性が高いといえます。特に、タンパク質の質と量、脂質のバランス、そして愛犬のライフステージに応じた栄養調整は、健康維持の根幹となる要素です。
いくらオールステージ用のドッグフードが人気ランキングで上位だからといって、ライフステージを無視してまで選んではいけません。
ドッグフード選びにおいて忘れてはならないのは愛犬一頭一頭が持つ個性と特別なニーズです。年齢、体重、活動レベル、健康状態はもちろん、食物アレルギーや嗜好性も考慮に入れながら、継続的に観察と調整を実施することが重要です。
また、ドッグフードの広告でわんちゃんの食いつきの雰囲気や印象だけで決めるのではなく、専門家の監修、科学的研究、透明性のある原材料表示などは、優良なメーカーを見分ける重要な指標となります。
愛犬の健康は日々の積み重ねによって築かれます。
適切なドッグフード選びと定期的な獣医師との相談を通じて愛犬が活力に満ちた長い生涯を幸せに送れるよう、科学的根拠に基づいた栄養管理を継続していくことが、飼い主として大切な義務の一つといえるでしょう。
①「たんぱく質」の望ましい割合って何%?
②「脂質」の望ましい割合って何%?
③原材料表示の1番目確認してますか?
④犬の穀物類、ウソとホント
⑤添加物(避けておきたい成分)
⑥フードの分類は?
詳しくはこちら・・・
この記事を書いた人
- 20年近くWEBに携わる。様々なメディアサイト運営経験あり。人の健康情報や民間療法などに関心があることを活かして、ドッグフードの記事を書いています。記事は可能な限りファクトチェックしています。
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